THE WOMAN WHO LEFT

立ち去った女

覚悟はしていたが長い。
そして、これまた覚悟していたが、エンターテイメント性も皆無である。
カリッとした白黒映像は新鮮で美しい…気にさせてくれる。
1シークエンスを除いて全編、広角寄りの固定カメラの長回しで構成されているのが独特のリズムを作っているんだろうが、その所為せいでこの異常な長さを生み出しているとも言える。商業映画であることを最初から拒否しているから許される造りなんだろう。
そういった前衛芸術っぽい映画にありがちな内容もてんこ盛りだ。
観ている間に『このシーンって必要なのか?』と何回も思わずにいられない長回し。
突然始まる詩の朗読。この詩に意味があるんだろうが、自分にはどうにもコレがこそばゆい。
そしてラストシークエンス。ここだけスタジオセットで撮影しているのではないだろうか。このシークエンスが舞台劇を観ている気分にさせられる。全体を通して固定カメラの長回しだから、全てにおいて舞台劇をある視点で観ているのと同じことになる。でもおそらくラスト以外はロケ撮影だろうから、意識しないと舞台チックな気分にはならないのに比べて、このラストは舞台臭が滲み出てくるのだ。舞台だから悪いって訳ではないんだけど、なんか気になっちゃうのです。

つらつら思うに、この監督さん、魔術的映像美とかフィリピンの鬼才とか数々の称号を与えられているそうだけど、この作品がたとえば普通のカラー作品だったとしたらガラリと印象は変わるんじゃないだろうか。白黒の魔力って確かにあると思う。
さらに、この固定カメラ長回しBGM無し手法って、言ってしまえば最も単純で楽な技法なんじゃないのかな?と考えてしまう。会話の度に話している人の顔のアップを撮らなくていいから手間要らずだし、何より役者が通しで芝居をできるから気が散らなくて良いんじゃないのかな?長いということで別の苦労はあるだろうけど。

愚痴ついでに、もうひとつ気になることを。
あれだけ無駄かも?と思うシーンがいっぱいあるのに、主人公のおばさんがなぜあんなに(大ではないが)金持ちなのかを説明するシークエンスがないのが不自然なんですよね。不自然は言い過ぎかもしれないが、そこはファンタジーにしているのか、どうにも納得できない。冤罪だったことで賠償金をもらったというのが一番しっくりくる回答なんだけど、最初におばさんはそれを拒否しているっぽいくだりがあったように思うんだけどね。
持ち家の権利は住み込みの管理人さんにあげちゃってるし、どこに一膳飯屋のオーナーになれるお金があったんだろうと気になってしょうがない。

などなどさんざん悪態をいたけど、ハリウッドメジャー系の観終るとスグ忘れちゃう映画(これをポップコーンムービーというのか?)に比べて、観ている間はしんどいがなぜかあとあとまで考えてしまう映画であることも確かだ。ということでこの映画は成功しているのかもしれない。まあヨーロッパのどこかで金獅子賞をもらってるんだから、そらそうやわな。
»»鑑賞日»»2019/07/19»»U-NEXTにて

●原題:THE WOMAN WHO LEFT
●制作年:2016
●上映時間:228min
●監督:ラヴ・ディアス
●キャスト:チャロ・サントス・コンシオ/ジョン・ロイド・クルズ/マイケル・デ・メサ
●お薦め度:---