しとやかな獣

しとやかな獣

主役は若尾文子というより、やはり伊藤雄之助と山岡久乃だろう。
その昔、名画座で観た時、『そんなに面白いかな?』と思った記憶しか残っていなかったので、イマイチ不安だったが、改めて観ると、いやはやなんのなんの、見応え充分。世界市場で勝負できる傑作ですな。
公団住宅のみという制約を活かした、練りに練った画面構成で、気持ちを逸らせない。これぞ、「映画」だと思う。
終わりも曖昧だが、「訳わからんわぁ」ではなく、好感のもてる曖昧さである。
»»鑑賞日»»2007/06/09

川島雄三と言えば、ご他聞に漏れず自分も「幕末太陽傳」から入りました。これは大方の人が認める世紀の大傑作で、フランキー堺のカッコ良さや芸達者ぶりに舌を巻くこと間違い無しなんですが、今作「しとやかな獣」には、フランキーは出ていない。かわりに渋い所で伊藤雄之介が主役を演じている。伊藤雄之介と言えば「椿三十郎」の馬面の城代家老役で強烈な印象を残している。ひょうひょうとした演技の人だけど、wikipediaを見てみると辛酸を舐め尽くしている人生模様だ。
舞台となったのは東京の晴海団地という公団住宅で、一定の確率で存在する公団マニアにはたまらない作品になっている。
脚本は新藤兼人によるブラックコメディ色の強いミステリーだ。

●原題:しとやかな獣
●制作年:1962
●上映時間:96min
●監督: 川島雄三
●キャスト:若尾文子/伊藤雄之介/山岡久乃
●星の数:★★★★★


◉丹下左膳餘話 百萬兩の壺

川島雄三監督と同じく夭折の天才と言われる山中貞雄監督の代表作にして日本が世界に誇る超超超超傑作。昭和10年に映画芸術は既に完成していたんだなと感じずにはいられない。
80年以上も前の作品だから画質音質ともひどいもんだが、よくぞ残っていてくれたと感謝の念しか浮かばない。これを500円程度で自分のものにできる世の中に感謝したい。
このパッケージ写真は本家の日活から出ていたもので、それなりの値段がする。著作権切れの関係か、廉価版も発売されているが、流石に安いだけあって、パッケージが如何にも安っぽい。両方持っているけど、元々が元々だけに画質音質の違いは感じられない。
推測だが本家版はどうも絶版となってしまったのか、中古品かセドリ屋による破格の値段の新品しか売っていない模様だ。アマゾンプライムも扱っていないみたいだ。こういう作品こそラインナップに挙げるべきじゃあないんでしょうかねえ。

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