Die Fälscher

ヒトラーの贋札

邦題から想像されるのは、ホロコーストものではあるが、そこで贋札作りに従事させられている面々が一致団結して裏をかき、ヒトラーに一泡ふかせてやる…というのを想定していたのだが、実際はちょっと違うタッチだった。

恐らく実話なんだろうとは思うが、ある天才的な贋札作りおじさん(カール・マルコヴィックス←ジェイソン・ステイサムを草臥クタビれさせた感じ)の回想の体で物語は始まる。
よくある現在と回想をまぜまぜにする手法ではなく、最初と最後だけ現在で中身全部が回想パートとなっている。この回想部分がかなりドキュメンタリータッチのカメラワークで、臨場感がある。

歴史的にはドルの贋札の発行をかなり少額に抑えることができたということでヒトラーに一泡ふかせていると言えなくもないが、映画としては殆どドキュメンタリーの再現ドラマを観ている感じであり、エンターテインメント性は皆無と言っていいだろう。
それというのもこれには原作があり、主役の天才贋札おじさんが書いた訳ではなく、たった独り、正義だー!と言ってわざとサボタージュして製作を遅れさせた男が原作だとエンドロールで字幕説明される。
サボタージュの所為セイで仲間5人が処刑されそうになるのをギリギリで防ぐのも、うまいこと交渉して結核の薬を入手する(結果的には何の役にも立たなかったが)のも、サボタージュの犯人は判っているが絶対密告させないのも全部、天才贋札おじさんとして描かれている。
に対して原作者は、このコミュニティの中では厄介者として描かれている。視聴者はみんな、仲間が殺されるんなら贋札ぐらいジャンジャン刷ったらエエやんと思うはずだ。しかし原作者は人死にが出そうになっても頑なに邪魔をする。
だから決して自分をエエモンに描こうとはしていないのは、ちょっと珍しいかもしれない。
(これは贋札による被害の重大性を理解していない私だったから、そこの緊張感を読み取れなかった)

余談だが、ポンド札を最初に刷ることになるんだが、当時のポンド札というのが、とても現在のお札とはかけ離れているのに驚いた。お札というよりは証券証書のような大きさとデザインだった。比べてドル札は今と変わらないのも、ある意味驚きだ。
»»鑑賞日»»2018/11/25

●原題:Die Fälscher
●制作年:2006
●上映時間:96min
●監督:シュテファン・ルツォヴィツキー
●キャスト:カール・マルコヴィックス/アウグスト・ディール
●お薦め度:★★★


◉縞模様のパジャマの少年

同じくホロコーストものの一遍。
仰天結末だが、こちらのストーリーはフィクションだそうだ。しかし考証はかなり念入りにされているらしい。でも製作がイギリスとアメリカだから言語が英語なのが玉に瑕。
「ヒトラーの贋札」もそうだが、この作品もDVDが異常に高額だ。もう絶版になったのかな?今の所この「縞模様のパジャマの少年」はプライムビデオで観ることができる。これもいつラインナップから外れるか知れたもんじゃない。

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