Blast from the Past

タイムトラベラー きのうから来た恋人

評価がほぼ五つ星に近い作品を観るということに味を占めて選んだのがコレだ。タイトルやジャケットだけでは観ようとは思えない作品だ。
タイムトラベラーという邦題だが、いわゆるSFのタイムトラベルではなく、生まれてから35年間ずっと世間と隔絶しており、父母以外の人間に会ったことのない男の話である。
その隔絶の理由を実に上手く描いており説得力がある。
ハリウッド映画を観ていて「またかよ」と思うことの1つに核兵器の扱いがある。あんなにポンポン発動させておいて主人公たちには何の影響もない風に描いてるから、アメリカ人はアホちゃうか?と思ってしまうんだけど、本作はそのアンチテーゼから始まる。
時代は冷戦まっただ中のキューバ危機の辺りらしい。アメリカ人も実はアホでもなんでもなく、核シェルターを自宅に設置しようという風潮も満更なかった訳ではないらしいことがオープニングで描かれる。
主人公の父親はその心配をかなり本気でしており、また発明家でもあることから、本格的な核シェルターを自宅の地下に作っていた。しかし友人たちからはちょっと変人扱いされているという描写があり、そこんとこがリアリティを増幅させてくるニクい演出だ。
そして色んな偶然が重なり、核戦争が始まってしまったと思い込んだ父親は身重の女房を連れてシェルターに閉じこもってしまう。
核汚染も薄まると想定した35年というタイマーが解除され、ついに地上に出ることができる日が来た。地下で生まれた子供も立派な青年に成長した。ここまでの件りをかなりの時間を割いて丁寧に描いているのが、後々効いてくる。
この主人公の青年が「ハムナプトラ」のブレンダン・フレイザーだ。パッと見、同一人物には思えないが、明朗快活、天真爛漫な好青年を見事に演じている。
当たり前な話、世間知らず故に起こる珍騒動から、ちとノータリンなのかもと思わせておいて、変人ではあるが天才博士な父親に英才教育を受けているから、フランス語堪能、喧嘩も一流、なかでもダンスまで見事にこなすシークエンスは天晴れと快哉を叫びたくなる出来栄えだ。
そんな天才博士な父親にも出来ないことがあるらしく、壊れてしまったメガネを完璧には修理できず、ガムテープらしきもので接着しているっていうのが地味ながら実にウマい、ほぼ五つ星というのも頷ける明るく楽しい良作でした。
»»鑑賞日»»2020/07/04»»U-NEXT

●原題:Blast from the Past
●制作年:1999
●上映時間:112min
●監督:ヒュー・ウィルソン
●キャスト:ブレンダン・フレイザー/アリシア・シルヴァーストーン/クリストファー・ウォーケン/シシー・スペイセク
●お薦め度:★★★★★