ヨーロッパほぼ一周食い心棒の旅#44 アポローニャ

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ギリシャ第34日目 6月22日(木)

マルガリータ亭脱出

シフノス島・アポローニャ

きのう精だして食料を喰ったので朝に食べるものがない。早くも照りつける太陽の下、例のパイ屋に足を運んだ。閉まっている。ま、そんなこったろと思ったぜ。この分だとヨシンバ開いていたとしてもパイなんか置いてないだろう。そういう星の下に生まれているのだ我々は。ペタペタと帰ってくると「めしくれー犬2号」が挨拶してくれる。テンガロンハットをかぶったおじいさんが不思議そーな顔をしているので挨拶をお見舞いした。挨拶をするというのは気持ちのよいことであるのうと実感するのであった。

朝めしヌキで用意を済ませ、いざサーティーの旦那の所へと向かった。
「あー、チェックアウト プリーズ」
しばらくボーゼンと座り続けるサーティーの旦那。
「2デイです」
「・・・・・・・・・、OK・・・・・、12サウザンズ。どうしても出るの?ウチが気に入らなかったのかい?」
「ノー、ノー、我々は1週間シフノスにいる予定で、他の所で3日間、ここで2日間、あとはまた別の所に行かないといけないんですよ」
と、ウソもホーベンをした。それとも本心を吐露したほうがよかったのだろうか。まー、2日間は居たんだし、こらえてつかーさい。
「サンキュー、グッバイ、アディオ、エファリストー」と握手をしてマルガリータ亭をあとにした。
バス停に着くと30分以上も余裕があった。誰もいない。
4時の方向太極拳カップルがゴミを捨てにきた。
村のおねえちゃんらしき人が、バスは何時なの?と訊いてくる。
「10時15分です」
「あら、そう。ありがとう」
何でわしらが教えんならんのや。
太極拳カップルが今度はザックを担いでやってくると、すぐにバスがやってきた。今日は時間通りのようだ。
アポローニャで降り、チョコレートくれたおじいさん亭に向かう。
孫娘が「バイバイ」と言って出迎えてくれた。
「カリメーラ」
「カリメーラッ」
おばさんが、あー、あんたたちーっと両手を挙げて出て来た。今、満員だけど1時に空くわと中に戻り鍵を持って娘さんと一緒に出て来た。
こないだ見せてもらった部屋に入ると、先客のザックがまだ置いてある。え?ここに入ってもいいのか?と首を傾げていると、娘さんが「キッチン付きの部屋がいい?」と訊いてきた。
えーーーーーーーーーー!そんなんあるのーーーーーっ?
もちろん見せてもらった。
こないだ下見に来た時に独り言で「やっぱりキッチン付きのはないんかー」とかなんとか言ったと思うけど、その時のおじいさんは無反応だったのになあ。もっとハッキリ訊いとくべきだった。

ハッキリ訊いとくべき
そりゃそうやろ。しかも独り言程度で呟いてたら判る訳ないわな。
もしかして日本語で言ったんとちゃうか。

ちょっとだけ狭いけど500だけの違いなので、キッチン付きを借りることにした。
「母のコーヒー飲みたい?」
エファリストーと頷いた。
しばらくするとグリークコーヒーと例の小クルーリーもどき盛り合わせを運んでくれた。おまけに外のテーブルとイスまで拭いてくれ、そこで相伴に預かった。
隣の2号室の前にはおねえさんが立っていて、彼女にもコーヒー要る?と訊いたようだがノーサンキューと断っている。彼女はイタリアーノだからグリークコーヒーやフラペーなんか口に合わないに違いない。
「このシフノスに来る前はミロス島に行ったけど私達の好みじゃなかったわね、今からカストロに行くのよ。あそこは良かった?」
「よかったすよ」マルガリータ亭以外はね。
「あーそう、じゃ、よかったわ」
「何日くらいここにいるの?」
「わからないわー、バイバイー」と彼氏と出かけて行った。
孫娘のバイバイガールがヨチヨチやってきて、手と顔をチョコだらけにしてキャッキャッと笑っている。が折り鶴の実演をしてはみたけど、特に反応もなく去って行った。哀しいノウ。
こちらもごっつぉさんをして、パスポートを提出し昼めしに出かけた。こんなことなら、バターや米やパスタや塩を置いてくるんではなかった。それにつけても清潔なのは何より有り難いと身に沁みても申しております。

バターや米やパスタや
この日記を読み返して、なんでこんなことをしたのか理解に苦しむ。別に置いてくることはないじゃないか。ザックに入り切らなかったのだろうか。

おととい入った店に入って、ベジボール、マカロニムサカ、グリークサラダ、アムステルビールを頼む。マカロニムサカはペストリードマカロニと英語で解説されていたけど、上にホワイトクリーム、玉子らしきものでデコレーションされており、初めての味且つ美味なる味だった。
全然流行ってないようだけど、けっこうやるのうごっつぁんですとやっていると、店主らしき兄ちゃんがビールぶらさげやって来て、栓を抜き「ザッツ マイ ナンタラー」と言って立ち去った。ビール1本おごりか!有り難き幸せ〜祝着至極に存じまする〜。
しかし呑んでしまうと即眠くなり、ここで横になりたい症候群に襲われてウツラウツラしていると、ペンキ職人のおっちゃん2人がいつの間にか横の席にいて、ジャパン?チバ、カワサキ、カゴシマに行ったぞよーとお決まりの問答をしだした。今回はそれに留まらず、あんたら、カストロのマルガリータ亭に泊まっとっただろ?ん?よく知ってるだろ?なぜなら、わしはマルガリータのアニキなんじゃわい、わっはっはっはと言って、ビールをぐびりと呑んだ。
昼寝のあと、買いもん買いもんと下に降りて行くと、公園の脇にミュゼを発見。がおごってくれるというので、しぶしぶ入ると、そこでは女子高生らしき団体がなぜか歌の練習をしていた。講師は姿勢の良い大声おじさん。
チケット売りの少女の話によると、今夜9時、昼に入ったレストランであるところのホテルシフノスの横にある広場において、彼女たちの歌と踊りと劇があるそうだ。ミュゼを出る頃には劇の練習に変わっていた。
わし1人だとマズ行かないけど、これは行くことになるだろうなと予想しつつ八百屋に行くと、殆ど品物がなく、オレンジ3個だけ買った。スーパーに入り、バター、パスタ、塩(あーもったいない)、パック入りトマトソース、ゴーダチーズ、水、ツボルグ、ジュースを買い、なぜか肉屋でトマトとレモンを買った。
宿に帰るとシニョリーナが、部屋前のテラスで涼んでいる。が、これからスパゲチーノイタリアーノを作るのだと申し上げると、他にどんなイタリア料理知ってる?と訊いてくる。ラザーニャ、ラビオリ、ピッツァと答えると笑っている(愛想笑いだ)。他愛も無い世間話くらいしかできない。
さて、このキッチンには電気コンロと小さなキャンピングガス、大鍋、ミルクパンしかないが清潔なのはなによりの装備だ。キャンピングガスonミルクパンでトマトソースを温めつつ、コンロon大鍋でパスタを茹でる。コンロは電気の割に火力が強く(今までで最高ではないかと感じる)、すぐに沸騰しストレスの無い料理ができる。
茹でたてにソースをかけてバター放り込みチーズをちぎっては投げちぎっては投げしてツボルグソーダを注いでさあ食べるぞと表のテーブルに着席すると現れ出でますイタリアーノカップル「オー、ボナペティート!」のかけ声で食べ始める。
インスタントのソースなのに(「だから」か?)非常にうまい。こんなの日本じゃ喰えないよなぁと涙を流しつつわしわし喰った。唯一の難点はミツバチの攻撃に遭ったことだ。
食べ終わると、子供の黒ねこが寄って来た。ちゃんと行儀を心得ているねこだ。しばらく遊ばせてもらい、恒例のオレンジを食べた。もしかして自分は動物好きなのか?再びねこをからかっていると「何してるの早くしなさい。もう9時なのにっ」と怒られてしまった。

シフノス、アポローニャのバイバイガールの宿の間取り

バイバイガール亭の間取り図
狭いながらも清潔な我が家。
なんのかんの言っても、シフノスと言えばこの宿のことを思い出す。
ここにもニワイジリストがいた!

シニョリーナ
若い女性のことを指すイタリア語。てっきり「セニョリータ」だとばっかり思っていた。セニョリータはスペイン語だそうだ。
あ、ムーチョもスペイン語ね。

日本じゃ喰えない
んな訳ないやろ〜だが、この時はそう思ったんだよね。

30mくらい下ったところで何やら拍手が聞こえて来たので、そこに見える教会へ行ってみると30人ほどの人だかりのする中、楽器を持ったおじいさん2人、民族衣装に身を包んだ子供たちが座り、演説もしくは挨拶を聞いては拍手していた。
おー、これはハニアに続くフォルクローレ第二弾では…と少し期待に胸をふくらませた。協議の結果、ホテルシフノス横はやめて、ここでしばらく待ってみることにした。そうこうしているとチケット売りの少女が現れ、昼間に教えてくれたあれは明日のことで、本日のイベントはこちらであると情報修正してくれた。
2人ずつお揃いの衣装の子供4組が、おじいさんの演奏に合わせて踊りだした。男子約1名だけがなんとなくヘタクソだが、みんなそれぞれ可愛らしい。1曲だけで彼らの踊りは終わり、次はカセットの曲に合わせて先生がウノ、ドス、トレと講習会を開催した。それが終わると再びダンスが始まった。そしてお役御免になった子供たちは、さっさと着替え只の子供に戻り帰ってしまった。
演奏人たちは、わしらはまだまだやりたいんじゃけんねーと勝手に演奏及び歌を始めだすと、チョイと出ました迫力オバサン、そこら辺の女性を駆り出して踊り始めた。迫力オバサンはかなりドデカく太っている見た目とは裏腹に身軽にステップを踏んで踊りまくっている。駆り出された人たちも最初はイヤイヤを装っていたが実はイケるクチで、みんな達者に踊りまくる姿にあっけに取られていると、横に「バーイ」と聞こえるので振り向けばイタリアーノカップルが横に座っているではないか。握手するでもなくハグするでもなくエヘヘと笑って一緒に見ていると、姿勢の良い大声オジサンも飛び出し、熱く激しく踊り狂いだしたーー。ハニアで見た踊りを彷彿とさせるものがある。靴の裏もパパンパンとやっている。

ハニアで見た踊り
クレタ島最初の日に泊まった、割と大きな都市。たまたま入ったタベルナで遭遇した恐るべき年寄り軍団によるパフォーマンス。詳しくはこちらのうまか不思議ギリシャ篇ハニアの巻を読んでくだされ。

最後はみんなの大合唱で幕を閉じかけたが大声オジサン居ても立ってもおられず勝手に体が動き、背の低いおじさんと踊りだし、あーしんどッと幕を閉じた。さあお開きお開きとみんながゾロゾロ帰るなか、今度は我等ががひょこひょこ前に踊りだした!何すんやー?と思う間もなく迫力オバサンの許までつかつかと近寄り、飾ってあった花をもらってしまった。オバサンは「ルイーザ、ルイーザ」と何回も繰り返し言っている。我々もルイーザルイーザと合唱した。
演奏人とその仲間たちに手を振って帰ろうとすると、明日はホテルシフノスじゃよ是非おいでなされと声をかけられた。アディオと言って別れルイーザルイーザと帰るのであった。

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