THE BEGUILED



白い肌の異常な夜

かなりインパクトのある邦題だ。18禁な内容を連想させるものだが、映像表現的には当然ながらソフトなものになっている。原題の直訳の意味が気になるところだが、この邦題は確かに内容を饒舌に語っている。
本作の制作年はいつ頃だろうか?恐らく「夕陽のガンマン」などのマカロニ系作品群と「ダーティーハリー」の間であろうことは容易に想像がつく。そして、監督ドン・シーゲルの出世作なんだろうなということも想像がつく。
というのもかなりの低予算でしのぎを削っているのが一目瞭然なのだ。オープニングタイトルに至っては、スチル写真の移動拡大縮小と効果音のみで構成されている。でもそれでいいんだよね。ここまで潔くやってくれると、逆に味があると思えてくる。
さて、クリント・イーストウッドである。
自分の持っているイーストウッド像を135度くらい曲げてくれる。生き延びるための手段なんだろうが、スケコマシである。歯の浮くセリフを臆面もなく言い放ち、次から次へと女をなぎ倒して行くのだ。お得意のガン捌きもコレといったアクションもないまま、下は12歳から上はアラ還あたりまで、女、女、女を手玉にとるの図は見事だ。
そしてそのまま逃げ切れるのか、手痛いしっぺ返しを喰らうのかは観てのお楽しみだ。数あるイーストウッド作品の中でもかなり異色の作品であることは間違いない。
»»鑑賞日»»2020/01/15

色々と調べてみた

原題の意味は「騙される」とか「魅了される」といった意味のようだ。この原題も同じく内容を的確に顕していると言えましょう。当たり前やけど。
監督ドン・シーゲルは、この時点ではもう監督生活25年以上の大ベテランではあったが、その殆どが低予算早撮りのB級映画を大量に撮っていて、スター監督とは言えない人だったようだ。
ところがこの数作前の「マンハッタン無宿」を、売り出し中のクリント・イーストウッドに指名される形で撮ることになり、親交が生まれる。といった経緯で本作が制作されたが、公開当時は興行的には失敗だったらしい。批評家にはウケがよかったし、フランスではヒットしたという話もある。
しかし監督本人は本作を自身の最高傑作に位置付けているとのことだ。
マカロニウエスタンの「ドル箱三部作」の最終章「続・夕陽のガンマン」は1966年ごろに制作されているとのことで、本作はその直後という時期ではない。逆に「ダーティー・ハリー」は直後の作品で同じ1971年に公開され、二人は正真正銘のスターにのし上がった…てなことです。

●原題:THE BEGUILED
●制作年:1971
●上映時間:105min
●監督:ドン・シーゲル
●キャスト:クリント・イーストウッド/エリザベス・ハートマン/ジョー・アン・ハリス
●お薦め度:★★★★