Barbara

東ベルリンから来た女

邦題から察するに東側から西側に潜入している女スパイの話なのかなと漠然と予想していたが、全然違った。
東ベルリンという東側の大都会から、何の因果か東側の小田舎に飛ばされた女医さんのお話である。その点では邦題は嘘をついていない。

結論から言うとこれは良い「曖昧な終り方」の映画である。
「善き人のためのソナタ」といい本作といい、東側が舞台の作品は「映画」なんだよなぁと思えるのだ。
なかでもポーランドのクシシュトフ・キシェロフスキ監督の作品は、テレビ作品でさえも紛う方無き「映画」になるのは、実に恐るべき手腕なのに加えて、西側に住んでいる者にとっては摩訶不思議なあの制度の存在も大きく貢献しているのではないだろうか。

本作では別に殺人事件が起こる訳でもないのに、緊張感が常に漂う。それというのもあの制度があるからだ。いったん目をつけられたが最後、抜き打ちで家宅捜査の血祭りにあげられるのは、たまったもんじゃない。
しかしその目を盗んで、いろいろと主人公も活動をするから「映画」になる。この活動が、本気で見張られているとしたら速攻でバレるようなレベルなんだけど、コロ加減の良い狐と狸の化かし合いだ。
そしてラスト、主人公のとった行動に、ああそうか!と妙に納得させられる。しかし後は野となれ山となれな選択なだけに、どうすんじゃい!?と思う反面、なんとかなるんじゃないの?と意味も無く安心できる、良い終り方だった。
ちょっとリュック・ベッソンの「ニキータ」を彷彿とさせる良い終り方だ。
»»鑑賞日»»2019/02/20

●原題:Barbara
●制作年:2012
●上映時間:105min
●監督:クリスティアン・ペツォール
●キャスト:ニーナ・ホス/ロナルド・ツェアフェルト/ライナー・ボック
●お薦め度:★★★★


◉ニキータ

ハリウッド大作ばりのアクションを展開しつつも、ラストはこれぞフランス映画な終り方で〆る演出に当時はシビれたものだ。

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