ヨーロッパほぼ一周食い心棒の旅#34 ティラ

うまか不思議ギリシャ篇ロゴ

ギリシャ第24日目 6月12日(月)

ヤマハメイト・鳥羽一郎

サンドリーニ島・フィラ

1人500Δrだという朝食を頼むと、予想を裏切らないショボい内容のものだった。
TONIに頼んでヤマハメイトを2500で借りることにした。ガソリンも売っているそうだが(そんなことしてエエんか?ま、50ccにヘルメットなしで二人乗りしてもいい国だから問題ないのかもしれん)当然断りガスステーションで2ℓだけ入れることにした。途中で一方通行になっていて迷ったので、に、なぜか都合良くそこにいたポリスに訊いてもらった。
しばらく進むと、あるわあるわスーパーマーケット。最後に登場した一番デカそうな店に入って、パン、ピクルスサラダ、フルーツジュース(パイン、オレンジ)、マッチ(蚊取り線香用)、封筒、そしてトワイニング製中国茶(ジャスミン、チャイニーズブラック、雲南)のティーバッグ(各10パック入り195Δr)。昨日の中華レストランで出て来たのと同じ物だ。どこかにあるに違いないと踏んでいたけれど、こんなに速攻で見つかるとは思っていなかった。バイクを借りてよかった。このスーパーは今まで見た中で最大級のデカさだ。嬉しくなってしまう。

なかなか快調なヤマハメイトを Pyrgos という村で留め、ぶっといチェーンのロックまでした。TONI'S RENT といい HOTEL THIRA といい、この家族は潔癖性なのではなかろうか。普通まいにち毎日消毒液(プールの匂い)で床を磨くだろうか。まあ我々にとってはありがたいことなのでよいのであるが。
ここには、これまたおなじみの白壁青屋根の教会が5、6軒建っている。小さなジグザクの階段で屋上に上れる長屋や、ロバくんの小屋などを見つつ上に上がると、哀しそーなロバくんに乗った寂しそーなおじいさんが上ってきた。そこにいたフランスのおねえちゃんが喜んで写真を撮ろうとしたら、さすが慣れたもので、立ち止まりこちらを向いてポーズを決め、はいパチリ。さすが観光の島、手慣れたものです。さらに驚いたことに、おじょうさん乗ってみんされ、それをあの人にフォトーしてもらいなされと私を指すではないか。

ヤマハメイト
永らく活躍したヤマハのビジネスバイク。デザインはホンダのカブに酷似しているが、大きな違いは2サイクルエンジンであるということ。2018年現在では、このタイプは消滅し、スクータータイプのものにその名は移管されている。とばかり思っていたら、ホンダのベンリィと混同していた。正しくは2008年で生産終了し、実質的後継車「ギア」にその座を譲り渡した。

メルシッと言ってカメラを私に渡し、彼女はロバくんにまたがった。お決まりのワンツースリーで撮ってあげたら、メルシッと言われつつカメラを返すのであった。するとどこからともなく「ウーゥッ」というヘンな鳴き声がしたと思ったら、目の前のおねえちゃんが同じように鳴き真似をした。
どうやら合図だったらしく、やがてフランスおばさんとおじさんが現れ、みんな揃ってメッシーオーヴォアッと言って退場していった。
ロバおじいさんは、ニコニコと今度はドイツおばさんにも同じように勧めた。ただし今度のカメラマンはそのダンナさんだ。ロバくんにとってはかわいそうな感じのおばさんも、ちょっと恥ずかしそうにまたがり、おじさんはソノママソノママと言いつつパチリと音をたてた。ダンケッとドイツ夫妻も去ってしまい、そこには沈黙が流れるのみだった。風がそよそよとささやいた。
あれ、こんなはずじゃなかったにのうと首を傾げ、独特の歯笛を鳴らしながら、おじいさんはロバくんと下に降りて行った。鈴がシャンシャンと響いていた。さてさてどうしたもんかいのう、なんで我々には乗ってみんされとは言ってくれなかったんだろうと思いつつ、あれじゃあ商売はしんどいかもしれませんなあとも思いつつ、我々はカストロの方向へ登って行くのであった。

サンドリーニ島の教会のスケッチ

ものすんごい風の中、時速30㎞くらいで走っていても音は時速80㎞級に感じてしまう。おっと、ロバくん発見。キキーっと止まり、おじいさんの歯笛を真似してみたけれど無反応。手を出してみたらだんだんこっちにやって来た。しかしずっとモグモグしている。こりゃぁさわれるかなと思って手を伸ばすとヒョイとよけられて、向こうに行ってしまった。しょうがないので、Perissaビーチに向かった。そこはかなりの波だったので道路沿いの木陰で昼めしとしゃれこむことにした。パンはけっこう柔らかくてイケる。ピクルスサラダも、こればっかりだと疲れるが味はイケる。ザジキとはまた違った味で、けっこうけっこう。
山の中腹にへばりついている教会があったので行ってみることにした。登り口はどこかいなとバイクで向かっている途中、WC、DOUCHE(フランス語でシャワー)と大書した白い家があったので、思わず「ダブルシー」と発音してしまったら、近くにいたおばさんが振り向き「トイレ?」と訊かれてしまった。またもや思わず頷いてしまったら、おばさん鍵を取出し、その白い家を開け出した。こりゃイカン、お金の要るトイレやと気がつき、ノーノー、ノーサンキューと言って逃げた。
この午后1時という炎天下のもと、あんなとこまで登るんか?と言うと、てきとーにフラフラ行ってみようよとのたまうので、お言葉通りフラフラ動き出すと、途中で止めるわけにはいかず、ハーハー言いながらついに辿り着いた。まー小部コベの不動さんみたいなもんやけど、途中ではエーゲ海がぐわぁ〜っと広がる大パノラマにはうひょーと言ってしまった。
日陰で休んでると、同じくハーハー言いながら中年夫婦がゴールインしてきた。席を譲ってあげた。ドイツ人らしいが、英語でなんじゃらかんじゃら訊かれてしまい、さっぱり判らなかったのでお茶をにごして降りることにした。

小部の不動さん
ウチの田舎にあるお不動さん。ココと同じくけっこうな急勾配を登って辿り着く野趣溢れるスポット。
もちろん、エーゲ海は広がらない。瀬戸内海が広がったかどうかは憶えていない。

下は岩でその上の斜面に広がる畑やロバくんにさよならを言ってホテルに帰る。ングング水を飲んで昼寝をした。6時ごろ夕陽が綺麗じゃと噂のイアの村へ向かった。白い軽石の丘、黒い丘、赤い丘を通って、約10㎞の行程で到着したけれど、まぁフィラの町の小型版みたいな感じやなあ、とりあえずバイクでグルっと見てからベストポイントに座ろうということになった。村の端らしき所まで行くと、何やら違う村が1.5㎞あちらという標識が出たので行ってみることにした。けっこう人やバイクが多く、何が待ち受けているのであろうかと胸が高鳴った(ウソだけど)。
しかしイザ着いてみると、一見とても綺麗に石をちりばめた建物や橋、桟橋などが崖っぷちの下に広がっていた。さらに近づくと、それらの家はどうやら地震で上から落ちて来たり、潰されたりした残骸のようである。その壊れかけた橋を渡ると小さな漁村がある。海辺には5、6軒タベルナがあり、その上には20軒くらいの家、ひんまがったように見える九十九折の階段、どうやらロバくんが崖上の村まで運んでくれるようだ。
タベルナの前を通り村の端まで行ったと思ったら、まだ石を散りばめた道は続いている。どんどん行くと、小さな入り江が現れた。舟が2艘もやってある。その向こうでは若者が靴を片手に挙げて、15mくらい沖にある崖だけで構成されたようにしか見えない小島に泳いで渡っている。一体何をするんだろう。
入り江をぐるっと回ると、モネムバシアの入り江プールよりも素晴らしいと思われるポイントに出た。「うひゃー、こりゃあ明日泳がんならんなー」どうやらココが最終地点のようだ。パラパラと向こうで石の落ちる音。ゲッ、さっきの兄ちゃんが、靴下、靴を履いて崖を登っているではないか!あれよあれよと言ってる間に登り詰めた。手をこちらに振っている。オーイ。こっちも振り返した。
しばらく崖っぷちにへばりつくフィラの町や水や波を見ているとポチャンという音。そして英語で何か言っている。うしろを振り向くと、崖登り男の友人らしき人物が困った様な顔をして
「ヘーイ、どうやってそんなとこに登ったんだー!?」
と大声で叫んだ。
「泳いで靴履いてよじ登ったんだー!お前も来いよー!グレートビューティフルワンダフルソーナイスだぜー!」と多分返答している。
どうやらその友人Aも行くようだ。服を脱ぎはじめている。空を見ると虹が、でっかい虹が掛かっていた。「レインボー!」と崖の上から声が上がった。
友人Aもいとも簡単に登ってしまう。思わず拍手を贈ってしまった。手を振って返してくる。うーん、やるなあ外人はー。泳ぐつもりなんかなかったんやろけど、あの頂上を見たら泳いで渡る気になって、やってしもたんやろなあ。行動力あふれる人物とはこういう人のことを言うんやろなあ。足許にも及ばないと思ってしまった。自分がした訳でもないのに、それを見ていたというだけで自分もエラくなったような気分になってしまった。しかしそろそろ帰らなければならない。
イアの崖島を登る男の図

その時の様子を記憶を頼りに描いてみた。虹が出たと書いてあるから、実際はもっと昼間に近い時間だったんだろうが、記憶ではこのくらいの夕焼けをバックにしていたように思う。人と島のバランスはこんなもんだった。

が、結局タベルナに入ることにした。ここがどうもおいしそうとが言う、5、6軒あったうちの真ん中あたりにある店に入ることにしたら、急に海の方が騒がしくなった。見ると船外機付きゴムボートにウェットスーツを着たおっさんが立ったまま、ズドドーと店の前に入港してきた。バックで鳥羽一郎が流れていてもおかしくない雰囲気だ。うしろには若い衆(同じくウェットスーツ着用)も控えている。
二人が岸に上がり、どうやら銛で突いたらしい魚を大量に並べだした。最後には60㎝くらいあるエイを2匹も(1匹は子持ちっぽい)並べた。んーかっちょいいなあー海の男してるなー。スーツを脱ぐと、おなかも出ているスーパーマリオのようなおっさんだった。でもかっこいい。

イアの村の崖下にあるタベルナから海を望むの図の写真

珍しく、その時の写真を撮っていた(アキモト氏ではないが、手持ちのフィルムは限られているのだ)。
おそらく骨董もののオリンパスペンEE(ハーフサイズ)で撮ったものと思われる(36枚撮りだと72枚撮ることができる、牧歌的な時代の話だ)。

はイカフライ、ハーバルサラダ、ハイネケン330cc。わしはサガナキ、トマトケフタ(?)、ツボルグソーダ。どれもうまかった。トマトの料理は初めての味で、焼トマトにチーズ+αが載っている何とも言えないお味。急に風がびょうびょうと吹き荒れだした。
若い衆が岸の階段に、俎板、ハサミ、ナイフ、鱗取りを持って来てサバき始めた。エイのサバキになると、おかみさんも出て来て2人がかりで、大風の中取り組みだした。サバキが終わる頃には風も止み、海水で道を掃除している。
店のおねえさんは最後にウゾを出してくれた。は大喜びで2杯も呑んでいる。おねえさんが、もうちょっとしたら今サバいてた魚が焼き上がるからそのままいらっしゃいと言ったようだけど、有り難いがそれだけはマズいと、レンタバイクを返さんならんのでと断って出てきた。
しかし感じの良い店であった。日没の瞬間を見て、雲の隙間から現れた満月を眺めつつ帰路につき、トニにグッドだったと言ったらニコっと笑っていた。
風はどうやら落ち着いたようだ。

ウゾ
ウーゾと呼ぶのが本当らしい。ギリシャ特産の蒸留酒。アニスの薫りがする。つまり八角ですな。台灣を思い出す。

2杯も呑んでいる
わしことは酒にとても弱く基本的に呑まない。バイクを運転していることもあるし、当然のことながらが2杯呑むことになる。

それだけはマズい
は魚にとても弱く基本的に食べない。振る舞ってくれたものを食べない訳にはいかず、そうなる前に退散したという次第です。


◉OUZO 12

ウゾ。さすがにコレは日本でも普通に売っている。
どうやらゴッホとかが中毒になってしまった「アブサン」という禁断の酒と親戚筋にあたる酒のようだ。このウゾに危険な中毒性はないそうだが。
数字が銘柄になっている覚え易い酒だ。コレが本国では最もポピュラーな製品で、ウゾでは他に「7」というのもある。フランスでは「51」というものの販促物をよく見かけた。
この「12」は12番目の樽が常に最高の出来になることから命名されたとのことだ。
但し、このタベルナで提供されたのがこの銘柄かどうかは知る由もない。

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