う ま か 不 思 議 ハ ワ イ イ ─ ハ ワ イ イ 島 篇  その1

ラナイから中庭を見る。紅い花の木陰にあるのが、無料ジュースサービス所。備え付けの使い捨てコップしか使ってはいけない。パインジュースは旨い。コーヒーもあったがそれなりの味だった。

 めずらしく早起きができた。
 昨日は遠慮したが、7時半から9時までプールサイドで自由に飲んでもよろしいと言うサービスのパインジュースをせしめてから、ラナイで朝飯をとる。知っている人は知っているけど、ラナイとはベランダのことで、これがハワイのホテルにおける目玉的要素のひとつらしい。たしかにここでごはんを頂けるのは気持ちがいい。
 しかーし!味は頂けない。昨夕買ったチーズは、用心してフランスものにしたのに…う、ま
か不思議だ、こりゃ。アメリカ向けの味付けにでもしているんだろうか?

 チェックアウトは無事に終るが、バスは来ない。エントランスあたりの目立つ所に立っておけとの仰せなので、ひとり日向に立っている。いや、もうひとり立っている。西洋のおばさんだ。こちらはダンナさんのほうが日陰で休んでいる。同じバスを待っているのかどうかは分からないが、空港行きの車を待っていることは間違いない。おばさんも不安そうである。
 約15分経ったころミニバンが停まり、降りた男が名前を確認すると、中年夫婦は乗りこんでしまった。諦めて我々も乗せてもらうか?と顔を見合わせた時、ようやくウサギ印の黄色いバスがやってきた。

クーポン…
大阪は桜橋にあるアロハ航空で1枚60ドルを4枚買っておいたもの。ウワサによると日本で買っておいたほうが安いらしいし、予約もしておいたから待たずに済んだのかもしれない。
でもクーポンを買ってから気がついたのだけど、NWAのマイレージが付くのはハワイアン航空のほうだった…(T_T)

 我々が乗るのはアロハ航空である。車掌さんが訊いてくれた利用する航空会社名に答えるだけで、そのチェックインカウンターのある所で降ろしてくれた。けっこうカウンターに列ができている。しかしどこに並べばよいのか分からない。
 並ぶ場所を尋ねるだけなのにずっと待つのはバカらしいから、まず殆ど人の並んでいないカウンターで訊いてみる。クーポンを見せただけで呆気なく発券してくれた。あの人たちは何に並んでいるんだろう?

 ずいぶん時間が余ったのでバーガーキングを利用してみる。バリューミールなるセットものは避けて、フォゥーパーなるトマトが挟まれたハンバーガーの単品1コのみを注文した。バリューセットには炭酸系の巨大な飲み物がついてくるので、これは遠慮しなければいけない。それよりも隣の店のグルメコーヒーというのが気になっているのだ。
 コナコーヒーで有名なハワイだが、やはりここはアメリカ、どうにも薄くてやりきれなかった。グルメコーヒーにはエスプレッソ各種が揃っている。
 昔はホットドッグとコーヒーなんてヘンな組み合わせだと思っていたけれど、ドトールでこれを試すと意外にゴールデンコンビだったので、ハンバーガーとコーヒーもイケるに違いない。あ、しかしギリシャのスブラキとコーラの組み合わせも捨てたもんじゃないから、ハンバーガーとコーラも合うだろうが、いかんせん、糖分の採りすぎになってしまうのだ…キビシー。
 「ワン・ダボー・エスプレッソ・プリーズ」とキメ、〆て約5ドル。ハンバーガーはさすがにデカかったし、エスプレッソは確かにエスプレッソだった。

 「あなたが並んでいるフライトナンバーは何番ですか?」
 最後尾にいるちょっとゴツい感じの兄ちゃんに訊いてみた。
 並ぶゲートナンバーは分かっているけど、今並んでいるこの人たちは果たして我々の乗る飛行機と同じ便なのか、それともその前の便なのか分からなかったからだ。
 日本にいる時はとても内気で引っ込み思案なボクチャンなのに、外国に飛び出て日を経るごとになぜかアクティブなわしになってゆく。ヨコタさん曰く、アメリカでは自分を主張せな生きていけへんで〜!なのである。
 ちょっとイカツイと思っていた兄ちゃん、破顔一笑にこにことていねいに答えてくれて、またもやちょっとエラくなったような気分である。この兄ちゃんの並んでいるのはやはり、1便早い飛行機で、同じハワイイ島だがヒロに行くそうである。

アロハエアー。
もう1つにハワイアンエアーがあるが、アロハのほうが小さい機体のように見受けられた。

 乗り込んだアロハエアーはこぢんまりとしていて、なかなかよろしい。国際線のジャンボが新幹線なら、これはチンチン電車といったフゼイである。申し訳程度にファーストクラスが最前列にあるが、あまり有り難味はない気がする。それでも座っている人がちゃんといるから不思議だ。関係者の方かなにかなのかもしれない。
 ジュースを飲んで写真をパチパチパくらいしたところでもう着いてしまった。

 コナ空港はこぢんまりとしていた。峠の茶屋のような空港だ。タラップを降りて、梛子の葉か何かで葺いた屋根の建物が2・3あるだけの所へ歩いて行った。




実質上…
たしかに、空港を出てもバスはおろか、タクシーさえも見あたらなかった。ほとんど100%の人が一直線にレンタカーコーナーに雪崩れ込んでいたように感じる。

4マイル…
約6.4km。最終的には最も近くにある大きな町であるコナのスタンドで入れたが、4マイル以上は離れていたと思う。が、チェックするおじさんも人の子、ましてハワイイの人間だ、超アバウトにチラッと燃料メーターの針を見ただけだった。もちろん文句は言われなかった。

 ちょっとシドロモドロになりながらも、レンタカーを借りることができた。
 ハワイイ島ではレンタカーを借りなければ、実質上、個人旅行は難しいという情報を小耳に挟んでいたので、すでに日本で予約をすませていた。だからそのバウチャーを渡すだけでいいのだけれど、ガソリンを入れて返すかどうかという質問に答えるのに手間取ってしまった。ごていねいに日本語で書かれている部分を読めと言うけれど、その日本語の意味がよくわからなかった。英語でそんな高度な質問はできないので、迷った末、自分で入れて返すというのに◯をしたが、半径4マイル以内のスタンドで入れろとか書いてあったような気がする。4マイルと言われてもどのくらいなのか見当がつかない。それに4マイル以内にスタンドはあるのか?もしなかったらどうするんだろか。
 予約の時のパンフにはフォードのフェスティバのような写真が載っていたので、一番安いエコノミークラスを頼んだけれど、駐車ナンバー38に待っていたのは普通のセダンタイプだった。メーカーはフォードだったけど。車体があまり長いのは慣れていないので少々不安が残る。できれば軽自動車のような大きさが良かったのだけれど、どうもそのようなものはこの国には存在しないらしい。
 右側通行は思ったほどヘンな感じはしない。ハンドルが左だから、そのほうが自然なのかもしれない。と思ってたら、お約束通り方向指示機を点滅させようとしてワイパーを動かしてしまった。

 走り出してすぐ高速道路になった。といってもお金を払う必要もないし、ジョギングや自転車の人も走っている。ガードレールもなければ、センターラインもはっきりしない。でも高速なのだ。時速55マイル、だいたい時速90キロで走らなければいけない。周りは荒涼としている。溶岩の固まったような岩がゴロゴロしている大地にズドドーンと道を通したといった具合だ。でも運転している人のマナーは、日本よりも良いような気がする。どこかのんびりしているようだ。交差点などでは、ぜったい先に行かしてやんないかんな!という雰囲気の多い日本と違って、すぐに道を譲ってくれようとする。

ネットで予約…
ホンマ便利です。喋らなくていいし、電話賃は安いし…。これもハワイイだから充実してるのでしょうか?それとも時代の趨勢というやつですか。
結局、旅行代理店にお世話になったのは、旅行保険の加入だけでした。

 本日から4日間お世話になるB&Bはインターネットで予約してある。行き方の説明書をファクスでもらったもの(ファクスなんだから地図かと思いきや、英語でずらずらっと説明してくれていた)を、それなりに訳したものをナビゲーター・テに持たせ、空港から南へ下ること約30分。それらしい場所までやってきたが、どうにも分からない。行ったり来たりした挙句、訊いてみたコーヒー工場兼カフェのおじさんとおばさんは、とても親切かつフレンドリーだった。
 目的のB&Bも目印になると書かれている教会さえも知らないそうだけれど、おそらくここをずっと下って行けばあるでしょう。ゆっくり運転して、そのPOBoxの番号を慎重に探しなさ〜い!ということだった。
 あ、そうそう、と刑事コロンボみたいにおじさんは「ボクもB&Bをやってるから」と財布からメーシをとりだし、地図で、このあたりに来た時はと説明して「ぜひ来てちょーだい」とちゃっかり渡してくれた。

 話のとおり、その道をもう少しだけ下ったところに目印のPOBoxナンバーを発見した。
 あとで分かったことだけれど、POBoxっていうのは郵便受けのことらしい。郵便番号よりももっと詳しく、1軒1軒に番号がついていて、住所を探すのにすこぶる便利な代物、まあ番地代わりみたいなものということだろう。

巨大なマメの木。
木も大きいが、マメ自体の大きさにおどろく。まるでブーメランのようにぶら下がっている。長さにして50cmくらいはあった。そして恐ろしく硬い。

B&B正面玄関

おおらかで…
なにしろ、このB&Bには、鍵というものが無いらしい。鍵穴はあったが、ついに部屋のキーは渡されなかった。「あのう、部屋のキーは…?」と訊くのは、どうも憚られる雰囲気なのだった。

 その郵便受け番号を右に曲がり、白い花のトンネルをくぐってするりとすべりこんだところは夢のようなところだった。
 赤い花咲くマメの木の下に車を停め、荷物を背負って入り口らしきほうへ歩く。ログハウスという感じではないが、ツーバイフォーでもないように思えるほど、がっしりと作られているようだ。屋根には赤い瓦がのっかっている。板で作った橋の向こうに入り口がある。橋のまんなかでネコがくつろいでいる。ドアには黄色いポストイットが貼られていた。なになに、
 「アロハ、ヒロヒコ&テルミ!ちょっと出かけているから自分で部屋に入ってくつろいでいてちょうだい。階段を右に降りてすぐの部屋よ(ピンク色の部屋です)」
 ということなので、勝手に入った。
 さすがハワイイ島、おおらかでござんす。
 階段を降りる。誰もいないかと思いきや、廊下の奥でおじさんが何やら洗濯らしきことをしている。ここのオーナーはアンジェラという女の人だし、う〜ん、誰だ?もしかして雇われ人かな?
 アロハーと声をかけた。
 「うァフぉー!びっくりしたー!」とおじさん(お兄さんか?)は心臓の上あたりをパタパタやって驚いている。そこまで大袈裟に驚かれると、ほんまかいな?と思ってしまうが、おじさんは真剣のようだ。それともアメリカ人お得意のサービスかな。
 「やっ、えーと、アンジェラを探しているのかな?」
 体勢を立て直したおじさんは急に饒舌にしゃべりはじめた。「彼女はちょっと出かけているんだ。ボクも君たちと同じようにビジターなんだ。もー、自分の家みたいに自由にくつろいでくれちゃったりなんかしちゃったりしてくれたらいいんだよ。そこが君たちの部屋だよ。アンダスタンド?早口でごめん。癖でね」ペコリ。と胸に手を当てて頭を下げてくれた。

 確かにピンクを基調にした部屋だった。いくぶんファンシーな気配がただようが、網戸のドアの向こうには広大な庭、その向こうに海が広がっている。
 天井にはこれぞ南国の象徴、扇風機の親方が据えられている。クーラーなんてものはない。昨日までのホテルにはあったが使わなかったし、個人的には大賛成である。クーラーなんかなくても、ちゃんと風が抜けるようにドアが設計されている。別室にあるトイレに風呂、洗面所も同じようなドアがついている。さすがだ。
 お言葉どおり自分の家のように、庭に出てみた。庭というより公園といったほうがいいかもしれない。芝生がずっと続いている。芝生とはこんなにふわふわしているものだったのか。どこかで、気持ちのよい音色が響いている。とても涼しい心持ちになる。

 我々の部屋の隣にある共有スペースらしき部屋を探索していると、裸足のアンジェラに遭遇した。アロハと握手をかわすと、こちらも早口でいろいろと説明をしてくれる。友だちの家のペンキを塗っていたそうだ。裸足で家の中を歩くのがハワイアンスタイルらしい。

上:風呂場に映った影
右:庭(というより日本だと公園といってもいいくらい)は木や花であふれている。

 2階のまん中が食堂になっている。その右手は我々1階部分よりも1ランク上の部屋が1つあり、左手はどうやらアンジェラのプライベートな領域になっているようだ。食堂の前がどどーんとラナイになっている。下よりももっと見晴らしが開けている。ここで朝食を食べさせてくれるということだ。
 その軒下にさっきの心地よい音色の鐘というか風鈴がぶら下がっていた。何本かの金属のパイプのまんなかに木の板がぶら下がっているものだった。ネイチャーカンパニーなんかでよく売っているタイプだ。テーブルの上には双眼鏡が置いてある。これで鳥を見るのに違いない。
 こんな立派な建物を一人で維持経営しているのだろうか。それともハワイではこれくらいは当たり前なのかな?ちょっと気になるのだった。

夕日にみとれる
ナビゲーター・テ

 外観はどうということのない鄙びたカフェだった。
 B&Bから少し下った海岸で意外に時間を費やしてしまったから、さっき見とれた夕日の残照のかけらも今は見あたらない。アンジェラに予約を入れてもらった7時は少し回ってしまったかもしれない。
 街道沿いにぽつんとあるカフェ。
 リコメンドしてもらわなかったら、恐らく見落としていたはずだ。しかし車を停める段になって、たくさん地元らしき車がスペースを埋めているのに気がついた。話半分に聞いていたが、これは本当に一番にご推薦されるだけの価値があるかもしれない!
 中は薄暗かった。緑を基調にした壁。シンプルでチープなテーブルとイス。しかし、順番待ちらしき一組が入り口に座っている。飾りっ気のない店内だが、アメリカの田舎というイメージを呼び起こしてくれる。
 「アロハー」
 出てきたおばさんに、7時に予約をしたハシモトですがと言うとちゃんと通じた。

 
ブラックビーンスープ
 
ポークチョップス・パイナップルソース
 
トーフトルティーヤ
 
プディング・アラ・リリコイ
 
バナナパンプディング・アラ・アイスクリーム・
  ウイズ苺チョコソース

 ポークチョップというのは洋食屋さんでけっこう見かけるメニューだが、どうしてもトンカツのほうに走ってしまう習性を持っているので、これまで一度も食べたことがなかった。洋食の本場(?)アメリカに来て初めて頼んでしまった。

コリアンダー…
中国・ベトナム・タイ方面の料理ではお馴染みの食材。香菜(シャンサイ)とかバクチーとかとも言うはず。
臭くてかなわんという向きもおられるらしいが、ウチではあこがれの高級食材にランクされている。

リリコイ…
ハワイイ語でパッションフルーツのこと。ガイドブックでこの言葉を見つけたテは狂喜した。

 ソースは2種類から選ぶことができる。グレイビーソースとパイナップルソース。グレイビーというのが何なのか訊いてみると、トマトを使ったソースらしいということくらいしか分からない。魚が入っているわけではなさそうなので別にそれでも良かったが、やっぱりハワイに来たということで、パイナップルソースを選ばせて頂いた次第でありました。

 うまい。

 スープはたぶん小豆で作ったホットチリといった感じだが、なぜかコリアンダーがたっぷり効いている。香菜好きの我々としては益々期待が高まる。日本で言う所の無国籍料理というジャンルの店だろうか。これは奥が深い料理人に違ない。
 ポークチョップというのは何のことはない、ポークソテーのことだった。恐れ多いことにデカイのが2枚も皿に載っている。嬉しくなってしまう。さすがバケツのようなアイスを食べる国アメリカ、やることがでかい。勿論熱々だし、パインソースも乙なものだった。
 バナナプディングはちゃんと火をいれて熱くしたものにアイスが盛られている。甘味が少々強いのも許せてしまうほど、立派なデザートだ。安い!テも念願のリリコイを食べることができて大満足のご様子であった。うー満腹まんぷく。

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