う ま か 不 思 議 ハ ワ イ イ ─ ハ ワ イ イ 島 篇  その6

 ここはセルフ店ではなかった。
 宿によってシステムは千差万別であるということがわかった。きのうのシャキシャキねえちゃんもいるが、今朝は若手のねえちゃんがちゃんと注文を取りにきてくれた。
 まず、半分に割ったパパイヤにレモンを絞る。この食べ方はアンジェラんちでも経験済みだが、こちらのほうがパパイヤ自体がうまいように思う。これは全く好みの問題だろうが、アンジェラんちのはいささか熟しすぎていたの感がある。
 飲みものは「おちょこ」を試すためにココアに決めたが、さすがにおちょこと言う勇気はなく「ホッチョッ」と発音すると、聞き返されることもなく通じたようだ。
 メインにテは目玉焼きとパン、わしはバタークリームパンケイクというものを選んだ。それにはココナッツクリームのようなものとメイプルシロップがついてきた。やはりヒジョーに甘い。わかっちゃいるけどやめられない、あヽデブ症の哀しさよ。明日は目玉焼きとコーヒーにしておこう。




乾児…
こぶん
ただ今、紋次郎に夢中なのでつい三度笠に見えてしまう。余談ですが、TVの紋次郎の三度笠は、演出でわざと大きく作っているそうだ。

 今日は営業時間内だからしっかり10ドル払ってボルケーノ周遊コースに入った。
 ビレッジセンターのとなりにあるアートギャラリーに入る。三度笠の乾児とでも言ったらよいような帽子(やっぱりどう見ても笠だな)を頭にちょこんと載せたおねえさんが出迎えてくれた。とても陽気でケラケラと笑っている。他の店員さんとギャグ(たぶん)を飛ばしながら、とてもゴヨーキに労働している。これは土地柄なのか民族性なのかわからないけれど、とてもいいなあと思うのであった。

ギャラリー内から外を見る

絶妙な塩梅……
まさに下田逸郎の名作アルバム「水平線眺めている」に収録されている「恋の彼方へ」の世界が広がっていると言っても過言ではありますまい。

 いまだに溶岩が流れ込んでいるという海の近くまでゆく。
 この道はチェーン・オブ・クレーターズ・ロードといって、解説書によれば最高にスリリングなドライブを体験できるそうだ。別にスリリングなことなんぞしたかぁないが、乗りかかった船だ、ゆかねばならぬ。
 運転してみると、スリリングなことなど何もない。それよりもこの道から見える海と空が絶妙な塩梅で、途中何度も車を停めて写真を撮った。
 終点の海岸近くで車を降り、そこからは歩きになるが、溶岩ドロドロ湯気モウモウなんていう光景に近寄れるわけもなく、ただただ暑くて、真っ黒の溶岩石に汗を滴らせただけだった。

写真上左:チェーン・オブ・クレーターズ・ロード
写真上右:固まった溶岩と青い海

 ということでひるめしである。
 タイレストランやカフェの看板が並んでいたはずなので、宿のそばまで戻ったけれど、どの店も閉じているようなつぶれているような気配だった。
 宿のレストランじゃ高いし、ガイドブックをひもといてみてもハッキリしない。お山方面に向かえば何かあるだろうということに協議は一致した。
 国道11号線をサウスポイント方面へ少し戻り、山側に曲がるとすぐにナイフとフォークのマークが現れた。シュルシュルと駐車場に車を停めるとそこはゴルフカントリークラブのレストランだった。

店 長「エミリさん、そろそろ暖簾降ろしといて」
エミリ「あいよぉ」
わしら「ガチャ(ドアを開ける音)」

 という絶妙の瞬間に入ったらしい。エミリおばさん(仮名、推定54才・パート歴12年)の顔が一瞬しかめ面になったのを、わたしは見逃さなかった。
 しかしそこはチップの国アメリカ、60ナノ秒ほどで態勢を立て直し、あくまでもプロフェッショナルにクールに席へ案内して注文をとってくれた。

 今日はローカルフードで攻める。
 サイミンだ。
 テレビドラマのタイトルではないらしい。なんでこんな名前なのか、何語なのかよくわからんが、ガイドブックにはぜひ一度は食べて!とあったように思う。写真で見る限り、ラーメンのようなものらしい。
 甘めのうどん出汁に駅の立ち食いソバ的な食感のラーメン色の麺が入り、フチの紅い焼き豚、ナルト、青ねぎをトッピング、そしてなぜか串焼きビーフがどんぶりの上に箸のように真一文字に配置され運ばれた。これで6.5ドル。たしかに食べるのは一度だけでよろしい、と思えるお味であった。

 その街道のついでにあるワイナリーとやらに寄ってみる。
 ここでもおねえさん方はご陽気に試飲を勧めてくる。しかし、何度も言うように、わしは下戸だし、今はドライバーでもあるのだ。きっぱりノーサンキュー。そう言っても、やな顔ひとつせず、オッケーと杯をさげてくれる。当り前と言えば当り前だけど、やっぱりものごとをハッキリ言わねばならんのだのう。

 午前中に行ったギャラリーへ戻る。
 テのお買い物症候群の療養のためだ。というのも、朝に目をつけていた、梛子の木で作られたカメのブローチがどうしても忘れられないからだ。
 オー!ウエルカムバック!と喜んでくれた。やはりご陽気だった。

 B&Bにて一休みののち、ヒロへ明日の下見という名目で、そこがロコモコ発祥の地と言われる大本山『カフェ100』へ向かうということに丸め込むことに成功した。
 とウカレポンチになったせいでか、車のバンパーを擦ってしまった!大きな顔した小心者のわたしは、いっきに落ち込んでしまった。

 しかしとにかく平静を装って国道11号線をひた走る。
 宿のあるボルケーノの辺りは、いちおう山の上のほうにあたるので、冬には雪なども見ることがあるらしいし、天気も不安定のようだ。
 ちょっと雨など降っていたが、麓にある割に大きな町があらわれたころには晴れ間がのぞいてきた。天気の変わりめ特有のすばらしい光線が射したけれど、運転中だから写真が撮れない。残念だ。車を停めて撮るべきだったのかもしれない。

このヴィラの回りは、中身とは裏腹にけっこう景色があった。

 たしかにヒロという町はいい感じがする。
 自分の名前と似かよっているからなのかもしれないが、どこか懐かしい町だ。キューピーやアヲハタの広告でよくお目にかかった町に似ている。
 ヒロかコナかと訊かれれば、ヒロを選ぶだろう。ただ雨が多いというのはチト難点だけど。

 まずカフェ100を見つけてから、明日のホテルを探す。
 ナントカヴィラというホテル。
 2ダブルベッドで76ドル。安いじゃねぇか。
 見せてもらえるかと訊くと、なんでそんなことをする必要があるのだ?というような顔をして、どうも要領を得ない。そこへオソージオバチャンが現われて、なぜか口添えをいただき、見せてもらえることになった。
 そのおばさんが案内してくれ、たいへん感謝しているのだけれど、そこは暗いしうるさいしで、う〜ん、流石に安いだけのことはある…というような部屋だったので、ジャパニーズ特有(もしかしたら大阪特有か?)の婉曲な言い回し(チョットカンガエマス)でお断り申しあげ、退散つかまつった。

フロント兄ちゃん…
やっぱりこの人は、日本語は喋れない日系の3世とか4世の人なんだろうと考えられる。
イスラームな…
大昔に行ったモロッコでは、さんざん不可解な状況に陥った実績があるので、免疫があると思っているのであった。

 次に海沿いにある政府登録国際観光旅館といった感じのホテル。
 団体さんが次から次へとなだれ込んでいる。
 上から下までどう見ても日本人なフロント兄ちゃんに訊いてみた。
 日本語でもよさそうなもんだが、ちょっと気取ってエーゴを駆使してみた。
 部屋は全てのカテゴリーに空があるそうだ。見せてもらうことはできないが、もういいかげん面倒になったし、さっきのヴィラよりも格段に活気があるので「下から2番目の部屋を予約願います」と頼んだら、豈図らんや「予約はこちらの番号へお願いします」と紙切れを差し出すではないか。ど〜ゆ〜こっちゃ!
 紙切れをひったくり横にある公衆電話で試みたが、『その番号にはかけることができません』と表示されてしまう。何度やってもダメだ。
 あのフロント兄ちゃんが日本人顔なだけに余計に不可解な気分になる。これがイスラームな顔だちだったりしたら、そういうもんかいなと納得するだろうけど……。
 もう踏んだり蹴ったりじゃーとホテルを出てブロローとカフェ100に突入してしまった。

ロコモコ…
この旅から帰ってきた時、ロコモコヽヽヽヽと騒いでも、誰も振り向かなかったのに、1年ほど経つと、チラホラと街にロコモコショップなる店を見かけるようになった。
ベトナム料理といい、ロコモコといい、やはりわしらは時代の先端を行っているに違いない…(^_^;)

 ロコモコとはハンバーグ目玉焼ライスグレービーソースがけといったもので、それが基本の形らしい。このカフェ100が元祖だそうで、ジモヤンであるところのロコが大好きなローカルフードの一つだそうだ。老舗の威信をかけてか、鬼のように種類がある。
 とにかくこれはお子様メニュー人間のわたしにとって否やのあろうはずのない食べ物だ。おまけにW(つまり『大』ですな)にしても、たったの3.5ドル(感覚で言えば350円!)ときているから、肥えること必至な危険物でもある。
 しかしその誘惑に逆らえず、基本形ロコモコのW(またの名を『てんこ』とも言う)を頼んでしまった。
 流石に安いだけあって、セルフサービス形式だった。
 窓口にて申告ののち、少し下がって暮れなずむ夕日およびCafe100というばかでかいネオンなどを眺むること暫しで、番号を呼ばれて品を受け取り、好きな席に着席していただきま〜すである。セルフ結構毛だらけ、合理的である。
 ライスはホノルルの時とは大違いで、とても上手く堅めに炊いてある。想像した通りの味でベリーグーだった。何よりも安いのはいいことだ。

カフェ100の待ち時間

 そこでさっきの紙切れをもう一度確認していてテが発見した。
 あの番号はアメリカ本土(メインランドというらしい)からかける時の番号だったようだ。島内からは別の番号になっている。そんなんわかるわけありまへん。あの兄ちゃんが指さしたほうをダイヤルするのが人情ってもんや!
 さて、カフェ100を出て、セブンイレブンに車を停め、今度はテがトライする。見事つながったけれど、今度は言ってることがようわからん。要約すると明日の朝8時以降にかけ直せとのことだ。それじゃぁ、予約の意味がない!もう諦めて帰るしかない。何から何まで何とやらで、さっぱりついとらん。霧が漂う帰り道は暗くて冷たくて、どこまでも続くように思え、とても不安になった。

(c)2001-2003 HaoHao

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